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June 25, 2017

谷キュー

●八年ばかりまえのことなのだが、わたくしは用があって大阪市営地下鉄にのっていた。めざしていたのは谷町九丁目という駅である。たぶんいつものようにぼけえっと電車内ですごし、やがて目的地に到着したのでわたくしは電車をおりた。そして人と会う約束のある建物をめざして、プリントアウトした地図を片手に町のなかを歩いた。のはいいんだけど、この建物というのが行けども行けどもでてこない。それいぜんに、どうも地図と街並みがぜんぜん一致しない。似てなくはないんだけど、でもやっぱりぜんぜんぴんとこない。ものすごく暑い日で、すぐにわたくしは汗だくになってしまった。けれども目的地はみつからない。じぶんでもいうのもなんだが、こう見えてわたくしはかなり時間にキビしいほうである。パンクチャルなほうである。遅刻というのはまずめったにしない。べつにほめられたくていっているわけじゃない。たぶんこういうのは性格の問題で、きっちり時間通りに目的地に存在しているということに、えもいわれぬ快感をおぼえてしまうたちなんである。だから、よくいう5分前集合というのはわたくしにとってはあたりまえのことで、というかたいていは15分前くらいには集合しているし、なんなら1時間前集合していることだってある。このときの人とあう約束というのも、それなりにたいせつな約束だったので、1時間以上ははやく目的地に存在するつもりでわたくしは電車にのっていた。のだが、まさか電車をおりたあとに道に迷う、それも地図がまったく意味不明で道に迷うという、まるで予測していなかった事態におちいってわたくしは、おなじ場所をなんどもなんどもいったりきたりしてるうちにだんだん心細くなってきた。どうにも困りはて、もはや自力ではこれはどうにもならんとサジをなげたわたくしは目についたコンビニ店にはいり、にぎっていた地図をみせて、ここに行きたいのですがどう行けばよいのでしょうかとたずねた。地図をみた店員さんはしばらくクビをひねっていたのだが、やがて、これはもしやふた駅さきの地図ではあるまいか、といいだした。この地図には谷町九丁目とかかれているが、ここは四丁目だ、というのだ。…は? ここ、谷町九丁目じゃないの? 四丁目? なんだそりゃ。なるほど地図が意味不明なのも道理である。そもそもわたくしは谷町には四丁目とか九丁目とかあるのだということなどツユ知らず、いやまあ九丁目があるんだから四丁目もあるんだろうけど、そうではなくて、九丁目という駅のほかに四丁目という駅があるとは知らなくて、たんに谷町九丁目駅というのをめざして地下鉄に乗っていて、というかそもそも九丁目というのすらあまり意識しておらず、谷町n丁目ぐらいにしか考えておらず、駅についたら「谷町n丁目」というアナウンスがあって、駅名板にも「谷町n丁目」と書かれてるからおお着いた着いたと勝手に信じこんで電車を降りていたのであった。まさかn丁目のほかに(n-5)丁目もあるだなんてそんな巧妙なワナが仕掛けられてるとは思いもよらなんだ。チクチョウメ。まあ世の中いろんなことがあるものよなあと感心しながら店員さんにお礼をいい、さいど地下鉄に乗りなおしてどうにか約束の時間には間にあうことができたのだが、でもなあ。それにしたってなあ。そりゃねえよなあ、とあとになって考えた。なにがないだろうって、そりゃねえだろう大阪市営地下鉄。しかもあきれたことに谷町シリーズに仕組まれたワナは四と九だけでなく六丁目というのまであって、谷町四丁目駅のつぎは谷町六丁目駅で、そのつぎが谷町九丁目駅なんである。そりゃあねえよなあ。電車の駅名に使っていい漢字や文字が何種類あるのかはしらないけど、そのなかから任意に五文字を選んで駅名をつけたとき、そのうちの四文字までが順番からして一致している確率を求めよなんて、ちょっと数学の試験の問題にでてきそうである。そして、いったいどれほど途方もない確率なんだ? と問題用紙をまえにしてアタマをかかえそうになるような、そんな話である。もしかしたらずっと関西にうまれてそだったひとにとっては、谷町四丁目のつぎは谷町六丁目でそのつぎは谷町九丁目で、それはそういうもので当たり前のことなのだろう。そうはおもうのだが、そんなのしったこっちゃないイバラギ県民にしてみたら、それはないだろうとしかいいようがない。なんでそんな、わたくしからしてみたら思いもよらないような、まぎらわしいことこのうえないことをするのか。たばかっているのか。このわたくしを。世間の人々を。おとしいれようとしているのか。このわたくしを。世間の人々を。もしそうであるのなら個人的にはそれはそれで楽しいのでそういうのもアリかもしれないと思うが、でもまさか大阪市がそんなことをするはずはなくて、たぶん、ふつうに、まじめに、ふざけているとかおとしいれようとかたばかろうとかおちょくろうとか受けようとかいう考えはまるでなく、単にふつうに、まじめに、谷町四丁目と谷町六丁目と谷町九丁目なんだろう。だって実際ここは谷町四丁目だしあっちは六丁目だしそのむこうは九丁目だし、谷町四丁目を谷町四丁目といってなにが悪いんですか。なんの文句があるんですか。変ないいがかりはやめてもらえませんか。といわれたらわたくしもまあ、それはそうですねとスゴスゴひっこむしかないのだけれど、でも、もしわたくしがどこかの駅の駅名を好きにつけていいということになったら、谷町四丁目駅のとなりは谷町六丁目だということには絶対にしない。そのさきが谷町九丁目だということになんて、いよいよもって絶対にしない。なぜかといえば、もちろん、「まちがえるから」である。だって駅名なんて、血の池地獄でもハンニャハラミタでも、なんでもいいんである。だったら、なるたけまぎらわしくないようにしとこうと、わたくしならそう思う。だいたいが地下鉄である。夜もふければ酔っ払った紳士淑女のみなさんが、大阪の言葉でいうところのおっちゃんやおばちゃんやにーちゃんやねーちゃんが、意識モーローとして乗り込んでいなさる。酩酊状態のかたがたがそこかしこにおられる。そういったかたがたに四丁目なのか六丁目なのか九丁目なのか判断しろというのは、それはコクというものである。四と六と九でシロクマか。おいちょかぶならうれしいが、でも地下鉄はおいちょかぶじゃない。そこはシロクロはっきりさせとこうじゃないか。まぎらわしいのはいけない。だからきちんと、ぱっと見ただけで区別がつくような駅名にしとこうと、わたくしならそう考える。わたくしならそうかんがえるのだが、しかし、自分がそう思うんだからほかのひともそう思うだろうというのはおおまちがいで、そんなわけで今日もあそこは谷町四丁目と谷町六丁目と谷町九丁目である。なんの反省も自省もなく。きのうもそうだったし、たぶん明日もそうなのだろう。谷キュー。あなたには痛い目にあわされました。あなたのことはけっして忘れません。はい。んで、こんなふうにいちど痛い目にあって、似たような駅名というのを気にしてすごしていると、じつはそこらじゅうにそういうのがある。たとえばうちの近所の常磐線の駅でいうと柏のほかに南柏と北柏というのがあるし、あと、松戸にも北松戸とか新松戸というのもある。取手にだって、裏取手とか逆さ取手というのがある。というのはさすがに冗談だけど、でも、日本全国きっとそんなのだらけなんじゃないかとおもう。たぶん。けどさあ。それ、もうちょっとなんかなかったのかなあ。駅名をつけるみなさん。そりゃ各方面から苦情とか苦言とか文句とかがでないような、でるにしてもなるたけ少なくてすむようなあたりさわりのない名前をつけたくなる気持ちはわかる。それはわかる。でも、あなたがつける駅名は、あなたが勝手に決めちゃえばもうそれでいいんである。文句はどうせでる。誰もなんにもいってこないなんてことはありえない。誰かがなんかはいってくる。だけど、そんなのはいちいち気にしなくていいんだ。もっと自分に自信をもとうよ。自信をもっていこうよ。そして、利用するひとがまちがえないような、まちがえたくったってまちがえようがないような、そういう駅名をつけるようにしようよ。お願いだから。雲雀丘花屋敷とか、喜連瓜破とか、放出とか、あるじゃんあなたがたのとこだって、そういうの。いろいろ。いい駅名だと思うよ。はじめて見たときには「おっ」となって、なんだこりゃとすぐにおぼえて、すくなくとも、まちがえようがない。ばっと見ただけで「おお、着いた着いた」となる。しかも安心。まちがえてる心配がこれっぽっちもない。駅名というのはやっぱり、そういうのだと思うんだけどなあ。どうすかね。

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Comments

というわけで。なんと。10年以上もすぎているではないですか。は~。そしていまだにこれ、あるんですか。は~。カンガイブカイものがあります。ともかくまあ、生きてます。と報告してみましたが、だれかみてくれるひとはいるのでしょうか。

Posted by: ぽいう | June 26, 2017 01:51 AM

もちろん見ている人はいるのです、ここに。

Posted by: | June 26, 2017 06:53 PM

えっ(おどろく)

Posted by: ぽいう | June 27, 2017 11:13 PM

ここにもいます。新谷さんはお元気でしょうか。

Posted by: | June 28, 2017 01:50 AM

ええっっ


…ところであのひと、新谷じゃなくて新屋っすよ新屋。とかいいつつわたくしも、あのひとと知り合って半年くらい、えんえんと名前をしりませんでした。仲間内で「エフコ」というあだ名でよばれてて、わたくしもなんも考えず「あのひとはエフコさん」ということですごしていたんですが、そのうちわたくし、知り合った女の子から「エフコさんて本名はなんていうんですか?」とたずねられて、わたくしもそれを知らないことに今更ながらに気づきまして、ガクゼンとしたのでした。そんでしょうがないからその場でおもいついたテキトーな名前をいってごまかしときました。長屋三郎。いまでもおぼえています。あのときわたくしの口をついてでてきた彼のテキトーな名前です。長屋三郎。うはは。あのときはすまなかったなエフコくんっ。というわけで、なにしてんでしょうねえエフコさん。もう15年くらいあってないです。

Posted by: ぽいう | June 28, 2017 04:43 PM

ここにもいます。
まだブログに移られる前のテキストサイトの頃から、よく読ませて頂いておりました。「沼のページ」とかがあった頃です。最初に拝読したのは確か「スモーク・オン・ザ・ウォーター」と題された文章でした。
たまたまぽいうさんのお名前を検索したらブログを更新なさっていて、手前勝手な話ですがなつかしさが一気にこみあげ、思わずコメントしてしまいました。

Posted by: | September 08, 2017 07:16 PM

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