犯罪者心理
25年くらいまえにいちど、トイレで脱糞をして流さなかったことがあります。ついうっかりというのではなくて、わかっていながら流しませんでした。すいません。確信犯です。最低です。それはある喫茶店でのことで、なんでかといえば流れなかったからです。装置が故障していたらしく、どうにも水が流れてこない。であるからには必然的に流すべきモノも流れません。ビクともせん。国やぶれて山河ありです。よくわからないけど。そんで、さらにまずいことに、そのときわたしは女の子とデート中でした。初デートだったとおもいました。よりによってそんなときに、とんでもない災厄をひきあててしまったものでございます。榎本加奈子で17秒フリーズをひくような確率だとおもいます。われながらものすごいヒキです。わたしはお店のひとにこのことを告げるべきだったのでしょうか。たぶんきっとそうするべきだったのでしょう。それはわかります。でも、そのときのわたしにはどうしてもそれがいえませんでした。すきな女の子とやっとこぎつけたデートのさいちゅうに彼女のまえで「流れませんでした」とはとてもいえませんでした。いえずにどうしたかというと、逃走しました。トイレからでるとただちに彼女をおいたてて、いやもうほとんどかっさらうかのようにして店外脱出しました。すいませんつぎのひと。なみだをのんでわたしはいま、この場から去ります。でもわるいのはあの店の水洗装置です。おれはなにひとつわるくないです。いやわるいかな。どうかんがえてもわるいですね。ごめんなさい。でも、わかっていてもしかたのないことってあるんです。そんで、その場はどうにかそうやってきりぬけたものの、そのあと数週間にわたって、このことが気になってしかたありませんでした。「あれはどうなったろう?」となんどもかんがえて、なんども確認にいきたくなりました。犯人はかならずあとになって現場の確認に戻るという話をききますが、その心理というのはこういうものであるのかとこの身をもってまなんだのでございました。
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